「すべて真夜中の恋人たち」川上未映子 :読了。
物語はゆっくりとゆっくりと進んでいく。
取り立てて何もない日常を描いた物語は、
真夜中に降り始めた雪のようにしんしんと静かだ。
そんな中、時折見受けられる登場人物の(ほんのかすかに)異常さをはらんだ習性。
三束さんの「人には、いろんな事情があると思うので」
って言葉が何より印象的で(かつこの作品を象徴する言葉で)。
物事をいい悪い、正しい間違ってるという物差しではなく、
「そうするに至る理由がある」というそのことだけを見つめ、理解しようとする、
現実に対する、そういう向き合い方。
騒がず、静かに、平穏に(感情にフタをすることで感度を自ら「鈍くして」)
毎日を過ごす人たちを、丁寧に描いた物語。