「ヒトでなし」 京極夏彦:読了。
ヒトでなしの主人公と、人殺しと、死にたい人が繰り広げる
「殺生」と「罪」、そして「正義」とは何かを
読む側に改めて突きつけてくる犯罪小説であり、思弁小説であり、
宗教小説。
だけど同時に丁々発止な語り口から繰り広げられるエンタメ小説なので
深いテーマでもスイスイと引き込まれる、物語としての引力がある。
人間とは根本のところ「快、不快」で物事をジャッジしてて、
ただそこに道徳や倫理、
良いか悪いか、
正しいか誤ってるか、
好きか嫌いか、
善か悪かなんかの意味づけをして
自分の判断を世間的に正当化させているだけなのだ。
自戒含め、
もし仮に「自分は正しい、間違ってない」と思った時こそ
この原理原則を思い出すことを自分自身に戒めたい。
※いや、ほんとスマホのアプリか何かで
もしこういう心持になった時とかに
アラームとかでお知らせがくるなどしてほしい位で本気で。
(スポーツ系のアプリでよくあるような)
個人的に印象に残ったのは
「(仏道では)正義の反対は悪ではなくて
正義の反対は不徳なんだよ」
みたいな意味の事を言った老住職の言葉。
そして
「罪には罰を、が耶蘇教(西洋倫理)の考え方なら
罪には赦しを、が仏道の(東洋倫理)考え方」というくだりも。